環境材料の研究は「環境を浄化する材料や環境に調和した材料の研究・開発」だけではありません。
私たちは「様々な環境問題に材料の視点から取り組む研究」は、すべて環境材料研究である、と考えています。
当研究室では、水や空気中に存在する有害物を除去・分解する材料、抗菌・抗ウイルス材料、省エネルギーを目指した撥水親水材料、
大気から二酸化炭素等のガスを分離する材料、負の熱膨張係数を持つ革新的酸化物、
第一原理計算による機能性材料の探索、機構解明等に関する研究を実施しています。
環境材料の研究は裾野が広く、様々な物質が対象になりますが、私たちはセラミックス材料科学に軸足を置き、物質の表面・界面に着目して研究を行っています。
固体の表面はさまざまな化学反応の「場」であり、光・熱・電子などとの直接的な接点です。
固体の表面・界面の構造や組成を制御すると、固体に本来はない性質を付与したり、固体の性質をこれまで以上に引き出すことが可能になります。
私たちはナノレベルでの表面・界面のエンジニアリングを通じて、材料科学の視点から地球環境問題に日夜挑戦を続けています。
新規光触媒、抗菌・抗ウイルス材料、特徴的な空間空隙を
持つ新規環境浄化材料、常温常圧近傍で貴金属や
レアメタルを使用せずに活性を発現する環境浄化触媒等の
開発を行っています。
表面のぬれ制御は省エネルギーの観点から重要な分野です。
我々は独自に開発した液滴転落挙動解析システムにより、
表面の濡れ性を動的な視点から解析し、新たな表面設計の
アプローチを提案しています。
地球温暖化ガスの回収と再資源化のキーテクノロジーはガスの
分離技術の確立と言われています。そこで、処理速度を分離性能を両立するガス分離用セラミックスフィルタを作製しています。
これまでに、CO2ガスのみが透過しづらいフィルタや、大気中から酸素のみを分離できるフィルタの作製に成功しています。
複数の素材を組み合せるエネルギーデバイスは、熱膨張による位置ずれや、各素材の熱膨張係数の違いが界面剥離や破壊などの故障を引き起こすことがあります。
これらの熱膨張破壊を軽減するための無機フィラーを合成しています。また、これらのフィラー材をポリマーに配合することで、ポリマーの熱膨張率を金属並みに低下させることに成功しています。
近年の計算機性能の向上により、高精度な理論予測が可能になりました。
熱物性の学術は発展途上にあり、第一原理計算と擬調和近似法に基づくフォノン計算により、物質・材料における熱膨張係数を予測し、その支配因子を探る研究を行っています。
表面・界面の構造とバンドの位置は、密接に関係しており、触媒活性・半導体工学・太陽電池などの分野において、その重要性は言及するまでもありません。
近年、計算材料科学の発展は凄まじく、実験による実証・解明が挑戦的な内容もある程度予測できるようになりました。
当研究室では、虚数振動フォノンを用い、勘や経験に依存せずバルクの安定構造探索を行い、その構造変化による物性変化と機構解明も行っています。
量子力学・固体物理学・群論・結晶学の知識を基に構造と物性の関係性を明らかにする研究も遂行しています。